小豆島八十八ヶ所遍路について調べていてここに辿り着いた人は、過去に四国を歩いたことがあって、「他にも歩ける霊場がないかな」と思っている人が多いと思うので、ここでは四国遍路と比較しながら実用一辺倒で記載することにします。歩き遍路をしたことがない方にとっては「なんじゃこりゃ」となるかもしれませんがご容赦を…。
(1)持ち物について
(1)事前の準備
小豆島八十八ヶ所を歩く場合、金剛杖や菅笠・白衣といった装束やお参りグッズのほか、ザックや雨具など装備のほとんどは四国遍路と同じものを使うことができる。小豆島八十八ヶ所のために事前に通販で購入したものは以下のとおり。
・納経帳…小豆島遍路専用の納経帳がある。予めご本尊と御詠歌が印刷されており、朱印だけ押してもらう形式。
・地図…「おへんろ道案内図(小豆島霊場会発行)」「Shōdoshima 88 Temple Pilgrimage(ぶよお堂発行)」
※納め札も小豆島遍路専用のものがあるが、通販はされていないようだったので小豆島に上陸してから入手した。
(2)持ち物・お参り編
・納経帳…上記のとおり、小豆島遍路専用の納経帳を使用する。
・納め札…「四国遍路のものと同じ」と説明しているサイトが多かったが、小豆島遍路専用のものがある。お遍路準備の強い味方「いっぽ一歩堂」などでも通販はされておらず、小豆島に渡ってから土庄の「長栄堂」で入手。その他、霊場会総本院や福田港近くの「春日堂」でも購入できる模様。100枚で110円。
・蝋燭と線香は、お寺やお堂の維持のために購入してくださいとされている場合もある。割高になるが、そもそも島内にこれらを追加調達できるところも限られているので、メインは手持ちのものを使用しつつ、お賽銭を兼ねてお堂のものも使って凌いだ。
(3)持ち物・歩き編
・小豆島八十八ヶ所ではデジタルマップはないものと思っていたが、上記「Shōdoshima 88 Temple Pilgrimage」(1枚ものの地図)の表紙にQRコードがあり、それを読み込んでGPSを許可にすると、遍路道のルートがピンク色で示された地図に自分の所在地を表示することができる。サンティアゴ巡礼の「Buen Camino」、四国の「Henro Helper」と同様の機能。最初に総本院で授戒を受けた時にこのことを教えてもらい、大いに助けられた(小豆島のへんろマークは四国より少ないうえ色褪せており、迷いやすい)。ただしアプリではなくインターネットを使用したものなので、電波のない所では使えない。
・小豆島では洗濯機を借りるにあたり「洗剤はないよ」というパターンが多かった。ホテルならフロントで売っているが、ペンションなどだとどうしようもない場合も。多くて10泊なので、小分けの洗濯洗剤を持っていくべし。乾燥機がないこともあったので、服は速乾性のもの推奨。
・島の北部〜東部は食料(昼食)を調達できるところはないと思っておいたほうがよい。「小豆島歩き遍路で一番の難所」とされる豆坂峠〜福田峠(81恵門ノ瀧〜82吉田庵〜83福田庵)がまさにこの島北東部にあり、事前に土庄あたりでお昼に食べるものを用意していないと所謂「シャリバテ」に陥る恐れがある。
・自販機は集落以外に工場脇や展望ポイントなどにもちょいちょい置いてあり、ひからびる心配はない。ほぼ新札対応済み(四国は新札不可で詰むことが時々あった)。
(2)宿泊事情
・泊まれる所が劇的に少ない。かつて(50年〜20年くらい前?)に比べて小豆島を巡るお遍路さんは激減しているそうで、たくさんあった「遍路宿」は今や土庄の「大師の宿」と内海地区の「ひろきや旅館」くらいになってしまった。島の北東部、81番恵門ノ瀧の登り口である小部の集落の遍路宿が全滅してしまったのはとても痛い。最近増えているのは一棟貸しや素泊まり形式の宿で、時間に融通はきくが食べるものを自分で用意する必要がある。ホテルや国民宿舎はリゾート仕様なので2食付きにすると1泊2万円近くになってしまうが、他に食堂などもないし、あっても早く閉まってしまうことが多いので、ホテルで食べることにしておいた方がいい。
・商店などと同様、島の北東部は宿も少ない。そのため、島の南側(土庄港、池田港、坂手港近辺)のホテル等に連泊し、歩き終わった場所から「オリーブバス」を利用してホテルに戻り、翌朝またそこまでバスで行って続きを歩くというスタイルを取る人が多い。その場合、大きな荷物を置いてお参りグッズだけで歩けるメリットがある。(私は四国の時のノリで進むごとに宿を転々としていったので、ずっとフルセット持って歩いていた。笑)
(3)霊場の廻り方について
・小豆島霊場には、寺院(30ヶ所)、堂庵(50ヶ所)、山岳霊場(14ヶ所)の3種類がある。「八十八ヶ所霊場」と言いながら合計で94ヶ所になるのは、88霊場に加え、奥の院が4つ、番外が1つあり、それに総本院を加えて94になるためだ。堂庵は無人のお堂。山岳霊場はかつての修験道の修行場で、鎖場や岩をくり抜いた洞穴などもありエキサイティング。
・札所の番号と実際の所在地がバラバラなので、四国遍路のように「番号順にお参りする」というわけではなく、次に一番近いところに行く、という感じになる。このため「順打ち」「逆打ち」という概念もないが、「小豆島霊場会」のホームページに掲載されているモデルルートがある意味「順打ち」になっており、矢印もその向きに設置されている。
・番号がバラバラなので当然とも言えるが、どこから廻りはじめてもいいのは四国と同じ。自分が1番アクセスしやすい港に降り立って、そこから始めれば良い。ただ、土庄にある「小豆島霊場総本院」で巡拝開始前の授戒(※)をしたり結願日を記入してくれたりするので、ここから始めて一周する人が多い。
・納経をしてくれる「寺院」を営業時間内に回れれば(下記4参照)、他は多少時間外でもお参りできるというのは四国にはないメリット。ただし山岳霊場は危険な場所もあるため、参拝時間が制限されている場合がある。また住宅地にあるお堂も多いので、時間外といっても常識の範囲内で。
(※)授戒について…小豆島霊場総本院の二階には授戒道場があり、巡拝者はここで授戒をうけてから巡拝に出るのがならわしとされている。もちろん絶対に受けなければならないわけではないが、せっかくなのでお願いした。時間に合わせていずれかの霊場から住職さんが来てくださるので、事前に電話で予約が必要。費用は3,000円。儀式後、弘法大師の御影と秘密血脈の護符をいただける。
(4)納経のしかた
(お参りについて)
・お参りの作法は四国遍路と同じ。
・堂庵(場合によっては寺院も)は扉が閉められているが、たいてい鍵は開いていて堂内に入ってお参りすることができる。最初は「え、開けていいのかな…入っていいのかな」と腰が引けるが、だんだん慣れてきてどこの扉も開けてみようとするようになる。無人の霊場での注意点は、火災防止のため、「自分のお参りが終わったら蝋燭を消していく」こと。
・寺院も四国に比べてアットホーム感があり、タイミングによっては住職さんが一緒に読経してくれたりすることも!小豆島遍路のおかげで、本職のお坊さんの前で読経することへの羞恥心を手放さざるをえなかった(笑)。
(納経について)
・納経料は、寺院300円、堂庵と山岳霊場は100円。御影の授与はない。
・堂庵と山岳霊場は基本的に無人のため、納経は「寺院」にてそれら数ヶ所をまとめて行っている。場合によってはまだ参拝していない堂庵や山岳霊場の印を先にもらうこともあり少し気持ち悪いが、これを回避しようとすると大変な飛び地を行ったり来たりしないといけないので諦めるしかない。
・寺院も家族経営が多いそうで、必ずしも人がいるとは限らない。留守の場合には「ご自身で押印ください」と朱印セットが置かれているので、セルフ納経することになる。
・印字の納経帳を使用せず、真筆で書いてもらうことも可能ではある。その場合はそれぞれプラス200円(寺院500円、堂庵・山岳霊場300円になる)。ただし、上記のとおり寺院でも人がいない場合があるため、運が悪いとその寺院が担当している部分の納経が白紙になる可能性がある。
(5)小豆島の遍路道について
「もくじ」ページと重複する部分もあるが、小豆島の遍路道について。
小豆島の歩き遍路道は距離としては四国の1/10ほどだが、1日のうちに何度もアップダウンがあり意外にきつい。島は火山活動でできたものでほぼ三角錐の形をしており、最高峰の星ヶ城山(標高816.7m。「寒霞渓」で有名)の山頂から海岸までの距離は4.3kmしかないというから、その傾斜の程が窺える。アスファルト道ですら、砂浜の真横を歩いている時以外はほとんど平らな所がなかった印象だ。
距離は1/10だが霊場数は94ヶ所あるということは、1日にお参りする寺院等の数が四国よりも断然多くなる。平均で日に8〜10ヶ所、1ヶ所20分としてもそれだけで3時間近くを要するので、その分を織り込んで1日の歩き距離を設定する必要がある。そして実際に歩いてみた感想は、よく言われる「小豆島は1週間で廻れる」というのはかなり無理がある、ということ。不可能ではないが、お堂で過ごす時間がほとんどなくなってしまい勿体ない。
私は霊場会モデルルートの「ゆっくり歩き遍路9泊10日」にプラス1日くらいで歩いたが、それでも1日だけお宿に着くのが日暮れ近くになってしまう日があり(お堂でフィーバーしすぎたのもあるが)、もう1日(12日間)あればよかったな、と思う。
四国で1番霊山寺から歩き始めたら、2日間はほぼ平坦な舗装路を歩いて3日目でへんろ転がし(焼山寺)、という感じになるが、小豆島ではどこから歩き始めても初日から細かく登ったり下ったりがある。そして「今日は山岳霊場があるぞ」という日は「これ軽自動車は無理では…?」という急坂、永遠に続く階段、手すり付きの峠道のオンパレードである。山岳霊場は四国にないもので、溶岩でできたごつごつした岩場道を越えてやっと着いたと思ったら、お堂まではさらに鎖場を登ったりと予想もしなかった展開が待ち受けていることもあり楽しい。
そして小豆島遍路の何よりもいいところは、毎日海が見られること。息を切らして険しい道を登った先には、必ず絶景が待っている!
最後に、個人的な感想を。「小豆島は四国遍路を終えてから廻った方が両方を思う存分楽しめる」。
「四国遍路の腕(脚?)馴らしに小豆島を廻ってみよう」という人もいるらしいのだが、次から次へとお堂がやってきて道も変化に富む小豆島の遍路道に比べて、四国の遍路道は長大だ。小豆島を歩いたあと、せっかくなので高松経由で帰ることにして少しだけ四国を歩いたのだが、四国の遍路道がどんなものかを知っている自分ですら「お寺とお寺の間、長っっ!!」と感じてしまった。比較するものがあると印象も変わるものである。
その長い長い区間を歩いている間にウダウダといろんなことを考えられるのが四国遍路の醍醐味なのだが、小豆島のあとに歩くと人によっては「暇」、ひいては「退屈」と感じてしまうかもしれないなと思った。もちろん歩き方やその目的はそれぞれ個人の自由ではあるのだが、四国を先に歩いて散々ウダウダしてある程度心の整理がついていたおかげで、軽やかな気持ちで小豆島の遍路道の美しさにただただ浸りながら歩くことができた。まるでボーナスステージ、ご褒美みたいな11日間だったな、と思うのだ。












